ブラシレスモータ:モータの性能の違い①
         回転数、トルク、大きさ

まえがき:高いモータ、安いモータ、何が違うのか?

ブラシレスモータ 違い 回転数 トルク 大きさ

世の中には様々なモータがあります。大きいモータ、小さいモータ。回転ではなく前後に動くモータ。一見して理由はわからないが高価なモータ。どのモータも理由があって選定されています。では、モータにどのような性能を求めて選ぶのでしょうか。あなたの求める理想のモータはどんな性能で、それはどういった種類の、どのような特徴を持ったモータなのでしょうか。

本連載は、最適なモータを選定するために必要な知識を提供することを目的としています。きっとあなたのモータ選定のお役に立つと思います。また、モータの基礎について学ぼうとしている方にも、参考になるはずです。

説明する性能の違いは以下で、2回に分けて掲載します。

       第1回 回転数/トルク/大きさ/価格
       第2回 回転の精度、滑らかさ/寿命・保守性/発塵性/効率/発熱/振動、
           騒音/アウトガス対策/動作環境

モータに何を期待するのか:回転運動

  モータとは電気エネルギーから機械エネルギーを得るもので、多くの場合は回転運動を得るものを指します。直線運動を得るリニアモータもありますが、ここでは割愛します。では、どのような回転運動が欲しいのでしょうか。ファンのように力が弱くてもいいから高速で回転してほしいのか、ドリルのように力強く回転してほしいのか。求める回転運動の違いに着目すると、回転数とトルクという二つの性能が重要になります。

トルク

トルクとは回転する強さです。トルクの単位はN・mを使いますが、小型モータの場合はmN・mが一般的です。

ブラシレス トルク

<弊社のブラシレスモータ>

モータにはトルクを高くするために様々な工夫がされています。マグネットワイヤ(巻線)の巻数が多ければ多いほどトルクが上がります。一定のコイルサイズに巻き込める回数には限度がありますので、より大きな線径のマグネットワイヤが使用されます。

弊社のBDシリーズは5種類の外径サイズをラインナップしています。モータ径が大きくなると、コイルサイズも大きくなるため、高いトルクが得られることが下図からわかります。  

ブラシレス トルク モータ径

モータのサイズを変えずに大きなトルクを出すためには、強力な磁石を使うことです。ネオジム磁石は最も強力な永久磁石で、サマリウムコバルト磁石は次いで強力な磁石です。しかし、ただ強い磁石を使用しても磁気がモータから漏れてしまい、漏れた分はトルクに寄与しません。強い磁気を最大限に活用するために、電磁鋼板という薄い機能材料を積層し、磁気回路の最適化がなされています。

また温度変化に対してサマリウムコバルト磁石の磁力は安定しているため、温度変化が大きい環境下や高温下でモータを安定して駆動させる場合は、サマリウムコバルト磁石を使用します。

回転数

モータの回転速度は、一般的に「回転数」と呼びます。単位時間のうちに何回回転するかという性能です。1分間の回転数としてrpmが一般的ですが、SI単位系ではmin-1で表されます。

トルクに比べ、回転数をただ上げるだけならば技術的にはあまり難しくありません。コイルの巻数を減らすだけで、回転数を増やすことができます。しかし、回転数を上げるとトルクが低下するため、トルクと回転数両方の要求を満たしていることが重要です。

ブラシレス 回転数

<弊社のブラシレスモータ>

また高い回転数で使用するならば、軸受にはすべり軸受よりボールベアリングを使うことが望ましいでしょう。高速で回転するほど摩擦抵抗が大きな損失になりますし、モータの寿命にも影響します。回転数が高ければ高いほど、軸の精度による騒音や振動の問題も大きくなります。

ブラシと回転する整流子を接触させるブラシ付きモータより、ブラシも整流子もないブラシレスモータのほうが騒音や振動は小さくなります。

大きさ

理想のモータという話をすれば、モータの大きさも重要な要素で性能の一つと言えるでしょう。回転数、トルクが十分でも最終製品に取り付けられなければ意味がありません。回転数を上げるだけならば、小さくてもコイルの巻数を減らせばよいですが、最低限のトルクがなければ回りません。そのため、トルクを上げる工夫が必要になります。

前述したとおりに強力な磁石を使う他に、巻線の占積率を上げることが重要になります。たびたび回転数の確保に巻数を減らせばよい、と記述していますが、それはコイルを疎らに巻くわけではありません。巻数を減らす代わりに太い巻線を用いることで多くの電流を流すことができ、同じ回転数でも高いトルクを得ることができます。占積率はどれだけ密に巻線が巻かれているのかという指標であり、細い巻線で高い巻数にするにせよ、太い巻線で巻数を減らすにせよ、トルクを得るために重要な要素となります。

一般にモータの出力は、鉄(磁石)×銅(コイル巻線)と言われ、二つのアプローチで性能を追求されています。

ブラシレス サイズ
<弊社のブラシレスモータ>

価格

ここまでいかにモータの性能を良くするかという話をしてきましたが、言うまでもなく価格も重要です。理想をより追求すれば、高いトルクと回転数を両立し、小さく、そして安いモータとなるでしょう。そうしたモータができるよう日夜努力していますが、すべてを兼ねそろえたモータが存在しないからこそ、こうして性能を知り選定をする必要があるわけです。価格についても、いくらかの性能を諦めれば、価格を下げることはできます。

例えば、トルクを上げるのに効果的なネオジム磁石は高価です。代わりにフェライト磁石を使えば大幅に安くすることができるでしょう。磁気が漏れないように積層する電磁鋼板も同様です。また、軸受にボールベアリングではなく滑り軸受を使っても価格を下げられるでしょう。精度の低い部品を使うことでも価格が下げられます。次回以降で説明する各性能についても同様です。常に、もっと安価な選択肢があるなかで高性能な材料、部品を使うということは妥協できない性能があるからです。完璧なモータはあり得ませんが、あなたにとって最適なモータはきっと存在することでしょう。

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